登場作品
『宇治拾遺物語』
巻11-8 132話 則光、盗人を切る事
夜中に小舎人童一人だけを連れて恋人のもとに向かって歩いていたところ、盗賊二人に襲われた。しかし、見事な身のこなしと太刀さばきで、二人とも切り捨ててしまった。翌朝、二人の遺体が見つかったので、自分がやったと噂になるのではないかと心配していた。しかし、全く無関係の男が「わしがやったのだ」と吹聴して回ったので、そういうことにして自分は黙っていた。
関連する人物 橘季通
『枕草子』
第78段 頭中将のすずろなるそら言を聞きて
ある夜、藤原斉信が清少納言を試すために、他の殿上人たちとも謀って、彼女に手紙を送った。則光は斉信のそば近くにいて、ことの成り行きをはらはらしながら見守っていた。清少納言から届いた返事が大変ほめたたえられたので、則光としても大いに面目をほどこした気持ちになって、この一件を清少納言に報告しにきた。
元夫婦だった則光と清少納言が、このときには兄妹のような関係となっていたこと、ふたりの関係性は一条天皇までも周知のことで、則光は官名ではなく「せうと(兄人)」と呼ばれていたことも紹介される。
第80段 里にまかでたるに
このとき清少納言は、則光を含めた親しい数人にしか居場所を伝えずに里下がりしていた。ある日、彼女の実家を訪れ、藤原斉信(則光の主人)から「妹(清少納言のこと)の居場所を教えろ」と迫られて弱ったという話をする。不器用な則光は、その場にあったわかめをひたすら食べて斉信の追及をごまかしたという。
後日再び斉信から追及を受けて、助けを求める返事を清少納言に送ったが、返ってきたのは紙に包まれたわかめだった。先だっての話を受けて、「私の居場所は絶対に教えないで!」という意図を表したものだったが、則光はそれに気づくことができなかった。これが清少納言の機嫌を損ねたのか、次第にふたりはすれ違うようになり、則光の遠江守赴任をきっかけに、全く疎遠になってしまった。