登場作品
『小倉百人一首』
25 名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
<逢坂山のさねかずら。その名は愛しい人に逢って共寝することを暗示する。そんなさねかずらの蔓をたぐるように、誰にも知られずにこっそりと、僕が君のもとに来る。そんなよい手はないものかなあ>
後撰和歌集巻第11恋歌3・701より。さねかずらはつる性の樹木で、樹液は整髪料にも用いられていたことから「美男葛(びなんかずら)」という呼び名もある。「さ寝(共寝)」との掛詞になっている。ほかにも「逢坂山」の「逢」と「逢ふ」、「くる」の「来る」と「繰る(蔓をたぐる)」がそれぞれ掛詞だったり、第3句までが「くる」を導く序詞だったりと、修辞技法を盛り込んだ歌である。