寂照 じゃくしょう
- 三河入道・参河入道 みかわのにゅうどう
- 寂昭上人 じゃくしょうしょうにん
962~1034。平安時代中期の僧侶。俗名・大江定基。三河守在任中に出家。寂心(慶滋保胤)や源信らを師として学び、のちに宋へ渡った。そのまま宋に留まり、生涯を終えた。
登場作品
『宇治拾遺物語』
巻4-7 59話 三川入道、遁世の間の事
俗人だった頃、もとの妻を捨てて、若く美しい女性を新しい妻に迎えて任地である三河国に伴った。ところが、この新しい妻が病気になって死んでしまった。定基(寂照)は悲しみのあまり、弔いもせずに話しかけたり口を吸ったりしていたが、やがて死臭が漂ってきたので厭わしくなって、泣く泣く葬った。これをきっかけに出家し、京に上って物乞いをしながら暮らしていたが、ある家で、かつて自分が捨てたもとの妻に再会した。もとの妻は、寂照の落ちぶれた姿を嘲ったが、寂照は道心堅固だったため、つらいと思うことはなかった。
巻13-12 172話 寂昭上人、鉢を飛ばす事
宋に渡ったときに、皇帝が僧侶たちを集めて食事の席を設けた。そして、「今日の給仕は必要ない。おのおの鉢を飛ばして食べ物を受けよ」と言った。日本から来た寂照を試そうという思惑だった。寂照は鉢を飛ばしたことなどなかったため途方に暮れたが、日本の方に向かって必死に祈った。すると、鉢が、周りの僧の鉢よりも速く飛んで食べ物を受けて戻ってきた。おかげで寂照は、面目を保つことができた。