平忠度 たいらのただのり

  • 薩摩守忠度 さつまのかみただのり

1144~84。平安末期の武将。父は平忠盛。清盛の末弟。武勇に優れ、源平の争乱の際には富士川の戦いや、北陸道への遠征軍などで将軍の一人を務めた。一方で、藤原俊成に師事して歌人としても名高く、平家の都落ちの際には俊成のもとを訪れて自らの和歌を託したという逸話を残す。一ノ谷の戦いで討たれた際にも和歌一首を身に着けていたという。

登場作品

『十訓抄』

第1 人に恵を施すべき事 1-16

ある晩、宮仕えをしている恋人のもとにしのんでいった。音を立てて知らせるのもどうかと思われひっそりと待っていたが、随分と夜が更けてきたので、扇をばたばたさせて、彼女に自分が来ていることを知らせようとした。すると、二人の仲を知る女房の声で、「野原一面に鳴く虫の声かしら」とつぶやくのが聞こえたので、扇で音を立てるのをやめてしまった。やがて、ようやく恋人と逢えたが、彼女に「どうして扇の音で知らせてくれなかったの?」と問われたので、「うるさいって言われちゃったんだよね」と答えた。先程の女房のつぶやきが、『新撰朗詠集』所収の虫の歌の一節だったことに引っかけた気の利いた返答だった。