藤原成範 ふじわらのしげのり
1135~1187。平安時代後期の公卿。藤原通憲(信西)の息子。小督の父。平治の乱の際に配流されたが、のちに許されて正二位中納言までのぼった。桜を愛する風雅な人物で桜町中納言と呼ばれた。
登場作品
『十訓抄』
第1 人に恵を施すべき事 1-26
配流先から許されて京に戻った。もとは宮中の女房たちの詰所に出入りできたが、今やそのような身分ではなくなってしまった。ある女房が、かつてのことを引き合いにして「雲の上はありし昔にかはらねど見し玉垂れのうちや恋しき(宮中は昔のままですが、身分の変わられたあなたには御簾の内が恋しいのでは?)」という歌を詠んだ。それに対して成範は、「ぞ」一文字だけを返歌として贈った。「玉垂れのうちや恋しき」の「や」を「ぞ」に変えようという意図で、機転の利いた返しだった。